出版文化賞


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●募集要項

毎年報道機関へ発表した時に更新します。上段メニューの「奨励と授賞」をご覧ください。

●出版文化賞の歩み

「文教高知」45号 高知県文教協会発会50周年特集号(平成11年11月27日発行)より

項目名

  • 最も歴史のある賞
  • 電子本も審査対象に
  • 造本の発達と共に
  • 特別賞について
  • 「高知県出版特別賞」の登場
  • 「土佐」へのこだわり
  • 龍馬は本を読まぬ

最も歴史のある賞
 高校時代の読書感想文の課題に「活字になった自分の名前があたえる印象」というのがあった。自分の著書が、一冊でも出版できたら素晴らしいだろうなあと、そのエッセイを読みながら思った。
 ワープロが日常的な小道具になり、活字に対する価値観も変わった。出版文化賞も、質的な変化のプロセスを経て、今年の審査が44回となる。
 高知県では最も歴史の長い地方文化賞である。

 

電子本も審査対象に
 審査対象として「書冊としての体裁を整えた単行本」という規定に、(電子出版物を含む)と付記されたのは昨年のことであった。一昨年であったか、四万十川を題材とした電子ブックが発行されたが、規定外で審査対象とならなかった。
 時は流れ、出版物の体裁と共に内容も変化してきた。画家や書家の受賞作品が年々増えてきた背景には、芸術家としての者書のこだわりと共に、地元業者の印刷技術の発達があった。
 審査の視点にも「出版物の内容・印刷・製版・装丁等」が評価されるとあった。
 「内容」は、いつの時代も変わらず最重要ポイントであった。
 昭和31年度の第1回受賞作品は、梶原子治著「高知県の農業」島田豊壽著「初期城下町の歴史」紫藤貞一郎著「竹庵随筆」吉本青司著「登攀」松山秀美著「歌人群像」平尾道雄ほか著「高知県の歴史」の6点である。それぞれに力作である。

 

造本の発達と共に
 審査基準としての「印刷・製版・装丁」の出来、不出来の比重は変わってきた。今日的発想では「金さえ出しゃあ、なんぼでも体裁のえい本はできらあや」ということで、本の外見を競うのは、美人コンテスト的次元と思われよう。
 しかし戦後の復興期から高度経済成長期の中を歩んできた県下の出版文化賞にとって、本の印刷、装丁だけでなく紙の質まで審査ポイントとして大切な要素であった。
 「印刷・製版・装丁」は「本」という文化に″投資″した著者の、そして出版者の姿勢が表われていた。地方での本の出版は、知的人生の生涯かけた仕事としての意気込みがなければできなかった。
 高知の出版業界は、こうした地元ライター達の熱意に応えて、技術的にも年々進歩したという印象がある。業者が地方における出版文化の価値を認識して、自らも成長し、この賞を影になり日向になりながら支えてきた。そうした業者の努力評価の軌跡は、初期の頃に「編集努力」「印刷技術賞」「装丁賞」などがあったことでも知ることができる。
 過去43回・258点の受賞作品。
 表彰は、その著者を表に立ててきたが、そのぞれの受賞作品を手がけてきた地方の出版業者が果たした影の役割を多として、この機会に賛辞をおくつておきたい。「本づくりは、商売ぬき」という話が、毎年表彰式の祝宴ででていた。

 

特別賞について
 やがてボーダレス時代の中で「特別賞」というのが登場する。
 これは昭和60年度第30回受賞の木戸昭平者「馬場孤蝶」(高知市民図書館出版)と土居重俊・浜田数義者「高知県方言辞典」(高知知市文化振興事業団編集)の印刷・製本が県外であったため「特別賞」としたのが始まりである。翌年にも3点と毎年1点は選外としがたい県外製本の出版物が選ばれてきた。
 しかしこの「特別賞」は数年前に廃止された。「高知の本づくリテクニックは、全国レベルに達した」と判定したためであり、これは出版文化賞が担ってきた地元の造本技術向上の役割については、終結宣言を意味していた。
 発展的に「高知県内出版物に限る」との条項を「出版は県内外を問わない」とし、製本の体裁は全国レベルで競うこととなった。

 

「高知県出版特別賞」の登場
 県外造本という意味で付記されていた「高知県出版文化賞(特別賞)」に変わって登場したのが「高知県出版特別賞」である。
 平成9年度第42回において高知県立図書館が10年の歳月をついやして完成した「南路志(全10巻)」が、個人出版などでは到底まねの出来ないものとして「高知県出版特別賞」が贈られた。

 

「土佐」へのこだわり
 それにしても受賞作品は、「土佐」にこだわつているものが多い。受賞作品258点の本の題名に「土佐」の字を含むものが44点ある。
 今年44回目を迎えるわけで、過去平均すると年1冊は「土佐」の2文字が題名に含まれていたことになる。「高知」を含む本は30冊である。
 「土佐」という風土がもつ特異性。その風土がはぐくんできた文化への愛着。
 高速道路が抜け、飛行機での往来が一般化する中で、土佐弁と共に「土佐」が消えつつある。
 「高知県在住の個人または団体が発表した作品」を対象として授賞するということで、従来あった個人の重賞不可の規定を廃止した。
 すでに受賞されたこうした「土佐」派の著作者たちの胸もかりつつ、今後とも興味つきない郷土の文化にこだわった作品の登場を期待したい。

 

龍馬は本を続まぬ
 高知は本の出版は盛んだが、「読書文化がない」といわれる。
 平井収二郎が、京で坂本龍馬に想いをよせる妹の加尾に、その脱藩の日に急ぎしたためた書状の一節。
 「龍馬は人物なれども、書物を読まぬゆへ、時として間違ひし事も御座候得ば、よくよく御心得あるべく候」
 南国の人間は、生来読書が苦手なのだろうか。
 郷土の先覚・寺田寅彦は、「書物を読んで利口になるものなら、本を食った虫を食べたすずめは、さだめて利口になったことであろう」といっている。
 出版文化に読書文化がついてこないという中で、大野一郎著「泣き虫先生」(第29回受賞)などのベストセラーもあった。

 (故 永国淳哉 執筆当時 学校法人日米学院長・出版文化賞選考委員)